ハイスペ女子( )のよこしまな所感

元社畜・現育休中30歳OVER女子( )の日々の所感。

TSUTAYA DISCASは何がいけなかったのか


TSUTAYA DISCAS問題、だいぶ収束してきた。
ただTwitter公式アカウントがアナウンスしているように、アクセス集中問題はまだ起きている模様。

一昨日から本件についてはちょこちょことボヤキを当ブログに書いていたけれど、元SEの観点から苦言を呈したい点をまとめておく。

おおきくまとめれば次の2つだと思う。
  • ユーザー連絡
  • コンチプラン

まずはユーザー連絡について。

今回、TSUTAYA DISCASのメンテナンス終了時間は伸びに伸びたのだが、一体いつからメンテナンス状態に入っていたのか、私は知らない。
というのも本システムのユーザーである私には何の連絡もなかったからである。

システムにはメンテナンスはつきものである。
今、世の中で活躍しているシステムには、小さいことであっても何かしらの不具合(バグ)を抱えていることがよくある。また、より良いサービス提供のため新機能が追加されることもよくある。
SEはこのバグ修正や新機能追加をすることを「リリース」と呼び、このリリースをするあめには、システムを中断する必要がある。
この中断をユーザー向けに「メンテナンス」などの言葉で表現することがある。

このメンテナンスの時間がどれくらいになるかは、システムや、修正するバグの量、追加する新機能の量などによりさまざまである。
メンテナンスの時間がどんなに短いものであろうと、その時間は「ユーザーに提供すると約束したサービス」を中断しなければならない時間である。
だから、通常はそのユーザーに事前連絡をする。
「申し訳ありません。メンテナンスのため、◯月◯日は本システムは利用できません。」と。

皆がよく使うシステムとして、銀行のATMが想像しやすいと思う。
銀行ATMがメンテナンスに入る場合は、必ず事前連絡が行われている。
ポスターを支点に貼ったり、TVCMを作ったり、ホームページで連絡をしたり…

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↑例として新生銀行のホームページの画面キャプチャ

特に銀行のダイレクトシステムのようなオンラインサービスの場合、サービス提供者はユーザーの電子メールアドレスを知っているため、そのアドレス宛に連絡メールを出すケースは多い。

今回のTSUTAYA DISCASのメンテナンスについてはメール連絡もなく、サイトでの事前掲載もなかったように思う。サイトでの掲載はもしかしたらあったのかもしれないが、日常的に利用している人の目に触れなければ意味はない。

結果、多くのユーザーが「メンテナンスなんて聞いてないよ、システム使いたかったのに」と言い出す始末となった。

SEにとってはシステムの末端利用者(今回の件で言えばTSUTAYA DISCASの会員)が最終的なお客様であるため、お金をもらってサービス提供している以上、できる限りメンテナンスの時間は短く、しかも事前に連絡をして、不便を最小限にしなくてはならない、というのが常識的な考えである。

次にコンチプランについて。

「コンチプラン」または「コンティンジェンシープラン」とは不測の事態が発生した場合の行動手順のことである。
システム用語というわけではないと思うが、私にとってはSEになってから使うようになった言葉だ。もしかするとインフラ業界や交通業界でもよく使われるのかもしれない。

先にも少し書いたように、SEはユーザーからお金をもらって、その分インフラのごとくシステムというサービスを提供しなければならない仕事なので、「メンテナンス時間」として約束した時間を超えてシステムを停止するのは、基本的にはNG行為である。

システムリリース作業というのは、人がやっていることであり、確実なものではない。リリース作業が失敗することもある。
それがSE界での「不測の事態」であり、このときどう対応するかという指針がコンチプランである。

リリースをする前には、担当SEは、リリース作業はどの程度の時間を見込んでいるのか、失敗した場合はどのような対策をとるのか、対策にはどれくらいの時間をとる余裕があるのか、などなどリリースの計画を考えて、不測の事態の発生も含めて、約束した時間内にシステム作業を終わらせなければならない。

一番最悪なリリース失敗のケースというのは、リリースしたことによりシステム全体が使えなくなることである。
その場合、通常はリリース前の状態に戻し、また後日仕切り直しをすることが通常である。
失敗したからといってダラダラと作業を続け、メンテナンス時間を伸ばし伸ばしにすることは滅多にない。
そうすればユーザーがシステムを使えない時間が伸びるからである。
特に証券システムのような時間が大切なシステムではメンテナンス時間の延長はご法度。

TSUTAYAは金融システムではないので、メンテナンス時間を伸ばすことに対する罪悪感がもしかしたらあまりないのかもしれない。
しかし会員は月額で料金を払っているのでシステムが使えるはずの時間に使えないことによるストレスや苛立ちを感じるのが普通だ。

そして今回、運営はメンテナンス終了時間を小刻みに小刻みに延長していった。
これもまたユーザーの苛立ちを募らせるものとなったし、通常コンチプランを作っているならば、どのくらいでメンテナンス終了するのかメドを立てられているはずである。
また、そもそも普通の良心的なSE・システム会社であれば、先に書いた通り、ここまで大きなリリース失敗をした場合は一旦元のシステムに戻し、後日仕切り直しをすることで、ユーザーの利用時間を過度に奪わないことが常識である。
そもそもメンテナンス作業はユーザーに不便をかける行為なので、できる限り利用者が少ない時間帯内で済ませるべきものである。

今回、リリース計画またはコンチプランは非常にお粗末なものだった可能性が高い。

またあるいは、プランはしっかりと立てていたがリリースを失敗し、さらにリリース前の状態に戻せなかったという可能性もある。
通常はリリース作業前に、現場システムのバックアップをとっておく。そうすればもしリリースが失敗しても、そのバックアップを使うことで現状維持ができるのである。
この現状維持作戦に出ず、数日にわたって対応していたところを見ると、バックアップの取り忘れをしていたため復旧に時間がかかっていたのかもしれない。
しかしバックアップ取り忘れというのは初歩的なミス。リリース作業をするときにはまず何よりも優先してやるべき作業。

なんにせよTSUTAYA DISCAS運営は、システムリリースやユーザーのことを甘く見ている…というかよく考えていない、ということは確実だと思う。

残念ながらこれでも業界大手。
こんなことは大したことではないと高を括っているだろうなぁ。
オンラインシステムの評判が少し下がったところで痛手ではないだろう。